うたに とける

母校の合唱部の演奏会は、今年で12回目。
またお手伝いに行ってきます。
終曲は三善先生の「交聲詩 海」。
第2回でも演奏したから、10年ぶりですか。
10年・・・長い・・・


第2回の時は、ちょうど受験明けだったこともあり、
声が戻りきっていない中での演奏会でした。
終曲の「海」は正直しんどかったなあ。
歌っている時に、いわゆる「支え」が上がってきてしまって、
本当にあっぷあっぷでした。
でも、必死こいて歌っていたある瞬間、
ふっと自分の声が歌に融け込むのを感じました。
歌っているのは、
自分でも周囲のみんなでもなく、
全てを包み込んだ大きなカタマリであるような感覚。
(高名なウチダ先生の言葉を借りるならば、
 合唱団全体でできた「複素的身体」といったところでしょうか)
そこに融け込んでいられたのはほんの一時で、
すぐさま必死こく状態に戻らざるをえなかったものの、
何とも言われぬ至福を感じたのを覚えています。


私が歌い続けてきた最大の理由は、
その至福を再体験したいという欲望です。
その後も「良い」演奏には何度も巡り合ったけれど、
残念ながら欲望は満たされずじまい。
今、「歌わない」理由はその辺にあるのかもしれません。


願わくは、舞台に上がる若人たちにも、
うたにとける至福を得られんことを。